1、気になる“ヘア”に注目

『よみがえる黒髪』より

毛についてのお話

相撲はご存じのとおり日本の国技ですが、その長い歴史の中でハゲのため悲惨な結末を迎えた力士の話があります。めっぽう強い力士で連戦連勝を重ねていましたが、遺伝だったのでしょうか、あるころより次第に頭髪の生え際が後退し始めました。仕方なく髷(マゲ)の位置を少しずつ後へずらしていきましたが、数年後にはとうとう髷が結えなくなり、遂には廃業に追い込まれてしまったというものです。このように毛は直接命には関係ないものの、私たちの生活に密接に関係し、時には人の人生をも変えてしまうようです。

この毛髪は主としてケラチンというタンパクでできており、一本で120g 程度のものを持ち上げるだけの強度があります。古来、漢方で血餘(豊富な血液を表す)とも言われ、健康や若さのシンボルとなってきました。すなわち、腎臓・肝臓・肺などの重篤な疾患をもつ人や老人では豊かな髪は保てないのです。

もはや、毛は人類において“生きてゆくために必須の器官”ではありません。その働きは生きてゆくのに必要であった“皮膚を覆う”という機能から、“局所保護や装飾”という機能に変わってきたのです。局所保護という意味合いで、頭髪はサンスクリーン剤のとうに頭皮を日光から守っています。また、眉毛はひさしの役目をし、汗が目の中に落ちこむのを防いでくれます。睫毛・鼻毛などはフィルターの役目をし、砂・ほこり・虫などが中に入ってくるのを防いでいます。

装飾という意味合いでは、結った髪型はファッションの重要な要素のひとつですし、あごひげはコーカシアンのような毛深い人種においては男性の特徴ともいえます。陰毛に関していえば、その生えている範囲は男性と女性で異なります。すなわち男性の場合はひし形、女性では三角形が多く見られます。不思議なことに女性の方が男性よりも軟毛が少ないのです。そして脚や腋のような場所では、女性はしばしば毛を剃ってしまうことによって女性らしさを強調します。多毛症などで毛が多すぎることも、ハゲ頭など毛が少なすぎることも、捻じゅ毛(縮毛)のような異常な毛の存在も、すべての男性、女性にとって関心が深く、不愉快であり心配ごとでもあるのです。

紀元前四世紀、人類がもっともっと貧しかったアリストテレスのころ、すでに男性型脱毛症の治療薬としてヤギの糞、ヘビの粉末などが出回っていたという事実も、ウーンなるほど、分かるような気がします。

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