3、よみがえる黒髪

『よみがえる黒髪』より

新しい育毛剤をつくるきっかけ

私と育毛剤とのかかわり合いは、ひょんなことから生まれました。徳島大学医学部皮膚科学教室に在籍していた時に、香川県丸亀市にある富士産業という会社から、入浴剤の臨床試験を頼まれました。そして、その臨床試験の一部に携わっていたのですが、その入浴剤は現在“シャンラブ”という商品名で武田薬品から販売され、保温効果、保湿効果が優れているため、各種皮膚疾患に悩む人たちのスキンケア入浴剤として、とても高い評価を得ています。一方、この試験を実施するかたわら、自分の興味ある実験として私は、毛髪に関係するさまざまな部分の“細胞培養”を行っていました。これは毛を構成するいろいろな部分を取り出し、プラスチック培養皿の中でその細胞を飼っておくものです。最初は細胞がすぐに死んでしまってなかなかうまくゆきませんでしたが、それでも二年ほど過ぎた昭和六十一年ころより少しずつ細胞が増殖し始め、平成に入ってからは数カ月の長期培養も可能になってきました。

そんなある日、入浴剤の臨床試験を通じて知り合いになった富士産業研究所の人たちとブレインストーミングをしていたところ、次の開発商品候補として新しい育毛剤が挙がりました。私のやっていた毛髪に関する基礎実験を核にして本格的な研究を開始し、新しい育毛剤に結びつけようというのです。ちょうど私のやっていた毛髪の細胞培養が、各方面から注目され始めた時期だったため、私としても富士産業と一緒にやるかどうかの決断を迫られることになりました。

富士産業研究所はやる気満々でアプローチしてきたわけですが、しかし・・・・・です。確かに培養皿の中で毛の細胞は増えていますが、果たしてこの細胞を使って新しい育毛剤を発見できるかどうかは、まったく見当もつきません。正直言って「ハゲに効く薬なんてできるはずがない」という感は否めないまま、「断るわけにもいかないし、仕方がない、やってみるか」ぐらいのノリでシブシブ動き始めたのです。まず、手当たり次第に育毛、発毛に効果があるといわれる単一物質(各種アミノ酸、糖分など)や生薬エキス(メドハギ、イチジク、甘草、ニンニク、イチョウ、アマチャズルなど)を抽出し、それらを含んだ培地で毛髪の細胞培養を行い、育毛効果をみる(すなわち細胞の増殖促進効果をみる)という実験を試みました。あまりたいした差は出ないものと予想していたのですが、フタを開けてみると・・・・・ある一つの成分が突出した効能をもっていることが判明しました。これが後述する柿の葉エキスです。シブシブ始めた実験でも、こうも明白な差が出ると「これは案外いけるかもしれない!」と拍車がかかり、次の動物実験でも予想外の有効成分・桑白皮エキスエキスが見つかり、さらに臨床試験へとどんどん研究が進められていったのです。

そして毛髪の研究を始めて十年、遂に今までにない画期的な育毛剤を開発することができたわけですが、この章ではこの育毛剤の特徴や治療成績について基礎実験、臨床試験、商品開発にまつわるエピソードなどを交えながらお話ししてみましょう。

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